正論をいう無職

有職になった

1分でわかる『方法論序説』





【1分でわかる】

「方法」の四つの規則。


1. 明確にする。

2. 分解する

3. 順序付けて並べる

4. モレなく枚挙する



【10分でわかる】

1. わたしが明証的に真であると認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れない。言い換えれば注意ぶかく即断と偏見を避けること、そして疑いをさしはさむ余地のまったくないほど明晰かつ判明に精神に現れるもの意外は、何もわたしの判断のなかに含めないこと。

2. わたしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること。

3. わたしの思考を順序にしたがって導くこと。そこでは、もっとも単純でもっとも認識しやすいものから始めて、少しずつ、階段を昇るようにして、もっとも複雑なものの認識にまで昇っていき、自然のままでは互いに前後の順序がつかないものの間にさえも順序を想定して進むこと。

4. すべての場合に、完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、なにも見落とさなかったと確信すること。




【印象に残った言葉】


『きわめてゆっくりと歩む人でも、つねにまっすぐな道をたどるなら、走りながらも道をそれてしまう人よりも、はるかに前進することができる

 『すべて良書を読むことは、著者である過去の世紀の一流の人びとと親しく語り合うようなもので、しかもその会話は、かれらの思想の最上のものだけを見せてくれる、入念な準備のなされたものだ』

『哲学はどんなことについても、もっともらしく語り、学識の劣る人に自分を賞賛させる手だてを授ける』

『 けれども度にあまり多く時間を費やすと、しまいには自分の国で異邦人になってしまう

『習俗を論じた古代異教徒たち(ストア派)の書物は、いとも壮麗で豪華ではあるが、砂や泥の上に築かれたにすぎない楼閣のようなものであった』

『 山々のあいだをうねっていた街道が、往来が激しければ、少しずつ平らに踏みならされて通りやすくなり、近道をしようと岩の上によじ登ったり崖の底へ降りたりするよりも、この広い街道を行くほうがはるかによいのと同じである』

『わたしの計画は、自分の思想を改革しようと勤め、わたしだけのものである土地に建設することであり、それより先へ広がったことは一度もない。自分の仕事が十分気に入って、ここでその見本をお目にかけるといっても、だからといって、これを真似ることをすすめたいのではない

『自分を実際以上に有能だと信じて性急に自分の判断をくださずにはいられず、自分の思考すべてを秩序だてて導いていくだけの忍耐心を持ち得ない人たち

『真と偽とを区別する能力が他の人より劣っていて、自分たちはその人たちに教えてもらえると判断するだけの理性と慎ましさがあり、もっとすぐれた意見を自らは探求しないで、むしろ、そうした他人の意見に従うことで満足してしまう人たち

『結局のところ、習慣や実例のほうが、どんな確実な知識よりもわたしたちを納得させている

『まだ下削りも していない大理石の塊からダイアナやミネルヴァの像を彫り出すのと同じくらい難しい』

『法律の数がやたらに多いと、しばしば悪徳に口実をあたえるので、国家は、ごくわずかの法律が遵守されるときのほうがずっとよく統治される』 

人間が認識しうるすべてのことがらは、同じやり方でつながり合っている、真でないいかなるものも真として受け入れることなく、一つのことから他のことを演繹するのに必要な順序をつねに守りさえすれば、どんなに遠く離れたものにも結局は到達できるし、どんなに隠れたものでも発見できる』

『これらの比例だけを一般的に検討するのがよい、その際そうした比例を、わたしにいっそう容易に認識させてくれるのに役立つような対象があれば、そのなかにだけ想定し、しかもそうした対象にだけ限るのではなく、それが当てはまるようなすべての対象にも、後になっていっそううまく適用できるようにする』

『その人たちの意見が実際にどのようなものかを知るには、かれらの言うことよりもむしろ行うことに注意すべきだ

『 だからといってわたしは、疑うためにだけ疑い、つねに非決定でいようとする懐疑論者たちを真似たわけではない

古い住居を取り壊すときには、通常その取り壊した材料を新しい家の建築に利用するため取っておく。それと同じように、自分の意見のなかで、基礎が確かでないと判断したものをのこらず破壊していく場合にも、いろいろな観察をし、たくさんの実験を集積し、それらを、後になってもっと確実な意見を打ち立てるのに役立てた』

『健康はまぎれもなくこの世で最上の善であり、ほかのあらゆる善の基礎である』

『多少とも重要だと判断するすべてのことを、その真理の発見に応じて書き続ける、しかもそれを、印刷させようとする場合と同じくらいの周到な注意を持って書き続けることが本当に必要なのである。・・・・・・多くの人に見られるにちがいないと思うものは、自分のためだけに書き留めておくものよりも、つねにいっそう丹念に見るのは明らかだし、また考え始めたときには真実だと思われたことが、紙に書こうとするときには虚偽に見えることもしばしばだったからだ』

長年すぐれた弁護士であった人が、そのために必ずしもあとでより良き裁判官になるわけではない』 

かれらは、木蔦のようなもので、自分を支える木よりも高く伸びようとはせず、てっぺんまで達したのち再び下に降りてくることさえしばしばある



【書評】
今回は一章ずつまとめるのではなく、「方法」をまとめ、それに加えて警句をまとめた。
「方法」に関しては、シンプルでありながらとても難しい、原理というものをデカルトは見ぬいたのだろう。
この原理があらゆるものに応用できる点で、今日のわれわれを大きく前進させてくれたのだ。 
印象的な言葉も数多くあった。
デカルトのその苦悩は、文体からもひしひしと感じ取れ、悩んだ末に行きついた鋭い洞察には、深く共感させられた。
とくに誰かに批判されるようなことが多い人であれば、これらのいくつかの言葉は、ずしんと心に響くはずだ。
時代という流れの中で、最良の選択を選ぶしかない人間の、苦しいながらも自信に満ちた生き方が、この本にはあふれていた。