正論をいう無職

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1分でわかる『伝わる・揺さぶる!文章を書く』




【1分でわかる】
考える方法がわかれば文章は書ける

1. 機能する文章を目指す
文章の7つの要件を押さえる

2. 7つの要件の思考法
○意見

意見とは、自分が考えてきた「問い」に対して、自分が出した「答え」である。
○望む結果
読んだ人に、どう言って欲しいか?
○論点
「論点」とは、文章を貫く問いだ。
○関係性
相手の側から見る。
○論拠
○根本思想
自分の根っこの想いに忠実か?

3. 伝わる・揺さぶる! 文章の書き方 実践編
論点→論拠→意見という構成だ。

4. より効果を出す! テクニック 上級編
●引きの伝達術
専門家になってしまうと、わからない人の、わからないという気持ちがわからない。
●動機をつくる
「読みたい」という気持ちをしっかり引き出すことが必要になる。

●思考停止ポイントを発見する
自分の頭でものを考えるとは、常に「揺らぎ」続けることでもある。

5. その先の結果へ
文章を書く上でも、正直は、最も有効な戦略だと、私は思う。
●言葉という不自由な道具
あなたは、まわりからどんなふうに見えているか。
●誤解されずに想いを伝える
恥ずかしがらず伝える

エピローグ あなたと私が出会った意味
あなたには書く力がある
本気でそれを伝えるために私はこの1冊を書いた。




【10分でわかる】
プロローグ 考えないという傷
考える方法がわかれば文章は書ける



1. 機能する文章を目指す
●目指すゴールを確認する
・よく働いて結果を出す文章
いわば、機能美の文章だ。
・豊かな表現力という幻想
・鑑賞でなく、機能する文章
・本書で目指す文章力のゴール
1編の完成された文章をまとめ上げることではない。
結果を出そう。
つまり、書くことによって、あなたがあなたの潜在力を活かし、読み手を共鳴させることだ。

文章の7つの要件を押さえる
・意見
あなたが一番言いたいことは何か?
・望む結果
だれが、どうなることを目指すのか?
・論点
あなたの問題意識はどこに向かっているか?
・読み手
読み手はどんな人か?
・自分の立場
相手から見たとき、自分はどんな立場にいるか?
・論拠
相手が納得する根拠があるか?
・根本思想
あなたの根本にある想いは何か?

●文章の基本構成
実際文章を書く上で、基本となるのが次の3要素だ。
論点、論拠、意見。
日常のメモから、論文まで、かなりの範囲をカバーする文章の原則だ。



2. 7つの要件の思考法
○意見
自分がいちばん言いたいことを発見する
●意見とは何か?
意見とは、自分が考えてきた「問い」に対して、自分が出した「答え」である。

●自分の意見を発見する方法
・考える道具を持つ
自分で「問い」を立て、自分で「答え」を出す、さらに、その答えに、新しい問いを立てる。
大きな問いに、いきなり答えを出そうとすると、考えるのがいやになってしまう。
・「問い」で意見を引き出す ケーススタディ
・自分が抱いた「問い」のかけがえのない価値

●問いを立てるエリアを広げていく
「問い」を立てているのに、考えが行き詰まってしまうことがある。
・時間軸へと視野を広げる
今まで生きてきた自分、現在の問題点、3年後、5年後・・・・・・こうなっていたいというビジョンへと時間軸を移動しながら「問い」を立てていく。
・空間軸へと視野を広げる
自身→自分の身の回り→会社→日本社会→世界・・・・・・と外に視野を広げて問いを立ててみよう。
行き詰ったときは、「問い」を立てるエリアをできるだけ広げてみよう。


○望む結果
何のために書くか?
結果をイメージすることが必要だ。
その文章、なんのために書くか?


○望む結果を意識して書く方法
・何のために?を見失う例
・セルフチェックの観点
自分は今何を書いているのか?
だから、何なのか?
読み手にどうなってもらいたいのか?
・読んだ人に、どう言って欲しいか?
読み終わった後のつぶやきをイメージして書き始めるだけで、仕事の指示書は、コミュニケーション性を強く帯びてくる。
・文章がうまいから、だからどうなのか?


○論点
何を書くか? 集め方・絞り方・決め方

●論点とは何か?
「論点」とは、文章を貫く問いだ。
・文章における論点のすれ違い
会話と同様に、文章にも読み手と書き手のすれ違いはある。
・論点を修正する
話題を変えなくても、文章の軌道修正は、論点を変えることでできる。
・読み手と自分の問題関心をキャッチする
相手の関心事をキャッチしつつ、それを、いかに自分の興味ある問いに発展させられるか、腕の見せ所だ。

●テーマと論点は違う
雑誌『BRUTUS』の例
テーマ       タイトル(論点)
男性ファッション   なぜ、日本男子はカジュアルが下手なのか?
これぞ、まさに論点だ。

●論点の2つの原則
・論点と意見に呼応する 原則1
・論点は「問い」の形にする 原則2

●論点の集め方・絞り方・決め方
「何を書くか?」を決める方法だ。
・論点の候補を集める ステップ1
・論点の候補を探す3つのエリア
「読み手」「テーマ」「自分」の3つが、探すべきエリアである。
行動としては、読み手を洗う、テーマを洗う、自分の中を洗い出す、となる。
・論点を絞る ステップ2
・論点を決める ステップ3
論点を決めるとは、最終的に上がった疑問文の中から、1つを選ぶことだ。


○関係性
自分の立場を発見する

●相手に応じて書き分ける
同僚、上司、後輩。同じメールでも反応は全て違う。

●相手の側から見る
恋愛感情、願望や欲、妄想、利害、無知のあるところ、自分と相手の関係の認識はズレやすい。

●他者の感覚を知る
私がどう思うか?社会がどう思うか?私と社会はどう関わるか?


○論拠
説得のためにいかに視野を広げるか?
どうすれば、人を説得できるのか?

●論拠を用意する 入門編
・自分の理由を挙げる ステップ1
・相手の都合から見た理由を想定する ステップ2
・相手側の反対理由を正しく押さえる ステップ3
「相手に理由を聞いてみる」。
・反対理由に合わせた論拠を準備する ステップ4

●説得のために視野を広げる
・なぜ抗議の声は届かないのか?
目標の設定が不明確ではないか?
手段の選択が安易ではないか?
・正論を押し付けても意味がない
・自分の実感、引っかかりを洗い出す
・問題を多角的に見る
・再び自分自身へ
・論拠をどう配列するか?
優先順位は低→高。
具体→抽象。
時間的配列は、背景→現在→将来。
ミクロからマクロへ。個人の実感→社会問題→社会構造
賛否は、賛成反対の代表的意見の提示→両者の共通差異点→そこから見える問題点


○根本思想
自分の根っこの想いに忠実か?

●根本思想はごまかせない
書くときの根本にある、あなたの想いは、どんな想いだろうか。

●要約でわかる! 根本思想
・お母さんのひと言要約
「淋しいんだね、おまえ」
・大事なものの順番が見えてくる
「ひと言で言うと?」
・想いに忠実であること



3. 伝わる・揺さぶる! 文章の書き方 実践編
●上司を説得する
さて、上司の決定に反対のとき、あなたはどうするか?
・相手はこれを読んでどう思うか? チェック1
・一番言いたいことは何か? チェック2
・的確な論点が立てられているか? チェック3
・結果をイメージする ステップ1
否定を提案に変える。
・論点を決める ステップ2
・意見をはっきりさせる ステップ3
・論拠を用意する ステップ4
・アウトラインをつくる ステップ5
オーソドックスな文章構成を示しておこう。
頭に、論点(これから何について書くか?)を書き、次に論拠を筋道立てて説明し、最後に意見を打ち出す。論点→論拠→意見という構成だ。
・読み手はこれで納得するか?
・自分の論へ反論する グレードアップポイント1
・相手の「論拠」を押さえる グレードアップポイント2
これは、可能であるなら本人に聞いてみるのが一番だ。
・視野を広げる グレードアップポイント3
時間軸をさかのぼってみる。現代の社会に目を広げる。文献にもあたってみる。問題を整理する。再び自分自身へ。
・再反論のあるアウトライン グレードアップポイント4
・自分の信頼性を高める グレードアップポイント5
相手の過去や、取り組む姿勢に、心から共感できることがあれば、それを文章の頭においてみるといい。
こういうことも、人間関係をスムーズにする術として、知っておいてよいことだ。

●お願いの文章を書く
仕事の内容や目的は違っていても、依頼文にはいくつかの共通するポイントがある。
・依頼文の要素を決める ステップ1
挨拶。自己紹介。志。依頼内容。依頼理由。条件。返事を伺う方法、締めの言葉等。
このうち条件などの具体的なところは、「要項」として別紙にまとめるといい。
・自分をどう信頼してもらうか? ステップ2
自己紹介には最新の注意を払おう。
・やる気を引き出す依頼理由 グレードアップポイント1
志に共感してもらう。面白いと感じてもらう。相手がやる必然性がある。
・正直な依頼を グレードアップポイント2
・依頼文の1人称 グレードアップポイント3
あなたと、相手と、組織と、顧客、それらの関係の中で、今、依頼をしている「私」は何者か?というあなたの立場を発見してほしい。

●議事録を書く
社会人に成り立てのころ、そう言われて困った。私が書いたのは、議事録というより、ランダムな発言録だった。
・発言でなく論点に着目
議題を「問い」の形にして頭に大きくはっきり書く。これにつきる。
・前後の流れを明示する グレードアップポイント1
・会議の位置付けを書く グレードアップポイント2
「問い」に対してどうする会議なのか?それも書いておくとわかりやすい。
・「今後の課題」を疑問文で書く グレードアップポイント3
・良い会議のアウトライン
会議やミーティングを成功させる秘訣も、文章と同様、「問い」にある。

●志望理由(自薦状)を書く
「まじめに努力していれば、いつかきっと、だれかが気づいてくれる」。この考えは、イエスであり、また、ノーだ。
・志望理由を固める質問(大学編)
過去→現在→未来、自分→日本社会→世界と、時間、空間を移動させていくとよい。
・キーを見つける
大学であれば「学部・学科」。
仕事であれば「分野・職種・業種」だろう。
・志望理由を固める質問(仕事編)
これらのキーを変えて、自問自答してみよう。
・まだやっていないことを書く難しさ
「学部」であったり「分野」であったり、キーとなることについて、広く社会のこれからを見つめ、業界全体を見つめ、自分を見つめる。
・なぜ、そこを選んだのか? グレードアップポイント1
大学であれば教育方針、企業であれば事業方針や理念がキーになる。
・固有の長所を言葉にする グレードアップポイント2
「何かがいやだから、これにしました」というなし崩し論法はやめよう。
・受け入れ側のメリットは? グレードアップポイント3
自分の志が「他者」にとっても意味あることであるといい。
・志望理由書の要件
志望分野をとりまく社会認識。志望分野との関係における自己認識。先方を選んだ理由。
これら3要件が入っていれば、順番は自由に考えていい。

●お詫びをする
・機能構造をどう組み立てるか?
謝罪→相手側から見る→罪を積極的に認める→原因を究明する→対策を立てる→償いをする→再度、謝罪。
・お詫びが目指す結果、要素とは?
反省→謝罪→償い。
・お詫びの文章テンプレート
たたき案
謝る→相手側から見るステージ→罪を積極的に認めるステージ→原因を究明するステージ→将来に向けた修正を示す→どう償うかを示す
・お詫びの1人称 グレードアップポイント
お詫び文の「1人称」は、私たち、私ども、弊社などを一切使わず、一貫して、「私」を使用するといい。
「私がやったこと」なのだから。

●メールを書く
メールの原則は「わかる」ことだ。
・一番言いたいことは何か決める ステップ1
要件のメールでは、意見を文章の頭にはっきり書こう。
・論拠を決める ステップ2
・相手にとっての意味を決める グレードアップポイント1
・相手にひと目でわかるタイトル グレードアップポイント2
・引き受けるという感覚
「いつ」「だれが」「どうする」を基本に、考える作業を引き受け、自分なりの結論を出し、「提案型」で書くと良い。
・受動態はつかわず、人間を主語にする



4. より効果を出す! テクニック 上級編

●引きの伝達術
あなたの書く文書の読み手を「おいてきぼり」にしないために、「2歩前提に引いて見ること」を提案したい。
・1つ前のプロセスを共有する
「今年」の話をするなら「去年」のことを、「来期の戦略」に入るのなら「今期の戦略」を、「意見」がほしいのなら「問題点」を。
・数えられる側は不安でいっぱい
・教える側のねらいまで伝える
教える側と教わる側が、最初にゴールを共有するといい。
・あえて素人の目線をつくる
専門家になってしまうと、わからない人の、わからないという気持ちがわからない。

●動機をつくる
・内容がいいだけでは読んでもらえない
・人はどんな時にアクションを起こすか?
「読みたい」という気持ちをしっかり引き出すことが必要になる。
・読む気を引き出す文章の書き方
効能を示す。相手にとって切実・身近な話題とリンクさせる。タイムリーな話題とリンクさせる。面白そうな独特の世界を醸す。

●やる気をわかせる指示の出し方
・意味、流れ、関係で伝える
・いきなり「なぜ?」は難しい問い
・「つながり」を見つける6つのキー
つながりを見つけるときのキーは、次にあげる6つだ。
流れ(過去→現在→未来)
相手の歴史。グループの歴史。社会の歴史。
関係(社会→グループ→相手)
社会とグループ。グループと相手。相手と社会。
以上6つの視野に、これからお願いしようとする「仕事」を乗せてみると、どこかに「意味」が出てくる。

●思考停止ポイントを発見する
自分の頭でものを考えるとは、常に「揺らぎ」続けることでもある。
・「揺らぎ」を止めてしまうひと言
自分の思考停止ポイントを発見する問いがある。
いま自分が、信頼を寄せている存在は?その人の言うことを咀嚼しないで人に広めていないか?
自分が優れていて、他人が劣ると思うのはどんなときか?
最近、人に何かを強く勧めたか?
会議や会話で自分が連発する言葉はあるか?
自分の発言の中で「絶対」をつけるものは何か?
自分のモットーは何か?



5. その先の結果へ
●戦略的なコミュニケーション
・感情を犠牲にするか、孤立するか?
・正直という戦略
文章を書く上でも、正直は、最も有効な戦略だと、私は思う。

●言葉という不自由な道具
自分を表し、人とつながる主な手段として私たちに与えられているのが、この、言葉という不自由な道具なのだ。
だから、相手と向き合ったとき、そこには巨大な誤解ゾーンが横たわっている

●存在を形作る「なんか」
コミュニケーションにおいて、人から見られる自分ではなく、自分が目指す自分にあわせようとして表現を練っていくと、相手との溝をとても大きくしてしまうことがある。
あなたは、まわりからどんなふうに見えているか、どうやってつかんでいるだろうか。
1人の人間が語る言葉や文章の背後には、その人を形づくる、構造的な「なんか」が常にひかえているのだ。

●誤解されずに想いを伝える
キーワードの定義だ。
「いまさら言うまでもないことだ」とか、「照れるから」と言って逃げず、畏れず、私は、日ごろあなたをこう見ている、あなたの仕事を私はこう受け取っている、という根本思想をコミュニケーションのはじめのところではっきりと示していこう
そうすれば、大切な人とのコミュニケーションは、もっとずっとブレなく、スムーズになっていくはずだ。



エピローグ あなたと私が出会った意味
あなたが好きな人に、プレゼントをあげるとしたら、次の、どの方法を採るだろう?

自分のあげたいものをあげる。
相手に「何がほしい?」聞くか、事前に趣味をよく調べ、相手が欲しがっているものをあげる。
相手のこれまでの趣味にない、新しい引き出しを開けるようなものをあげる。

・自分という存在が関わる意味
自分という存在が、関わる意味はなんだろう?
・メッセージを伝える
・あなたにしか書けない、かけがえのないもの
多くの場合、自分に湧き上がってくるものは、自分と相手のギャップによって生じるメッセージだから、ときに相手に歓迎されず、違和感やざらつきを与えるかもしれない。
それでも違和感という形で、ときに反発という形で、相手の潜在力を揺り動かすことができれば、相手を生かし、自分を相手の中にいかしたことにほかならない。

あなたには書く力がある。


本気でそれを伝えるために私はこの1冊を書いた。
あなたの書いたものに、私はいつ、どんな形で出会えるだろうか?



【60分で理解する】
プロローグ 考えないという傷
・考える方法がわかれば、文章は生まれ変わる
書くことは考えることだ。
何ごともあまり考えない、考えてないことにさえ気づかない人は、一見オメデタイ人のように思えるのだが、実は深く傷ついている。

・とりあえず、とりあえず、とりあえず・・・・・・
とりあえずばかりの17歳に、どうやって改作してもらうか。

・2時間で文章は生まれ変わるか?
2時間しかない。
いったいどんな指導を行えば、この文章を引き上げられるのだろう?あなたが、ひと言だけこの子にアドバイスするとしたら、何と言うだろう?

・自分の立場を発見する
彼女には、「何を書くことが求められているのか」を、自分で、正しく深くつかむことから始めてもらった。資料の読み込みは、実に淡々と進行した。

・考えない、という迷路の出口
自分で考える以外にない。こういう時は、「答え」ではなく、「問い」の方を探すことだ。
「切実な問題」それを考えてもらうために、現在、過去、将来、そして彼女の内面、身の回り、社会と、角度を変えて次々に小さな「問い」をつくっては、彼女に投げかけ、彼女が答え、その答えた内容をさらに問いかける、ということを約1時間繰り返した。

・自分の頭でものを考える自由
彼女の文章は変わった。葛藤は大きくなったにもかかわらず、生き生きとしていた。
自分で考える方法を手にしたことで、彼女は極めて自由に見えた。
最初の文章だけで彼女の人間性を判断していたなら、私は大きな見誤りをしていたことだろう。
書くために必要なのは、「考える」ことだった

・考える方法がわかれば文章は書ける
「何と何を考えればよいのか」、それらを「どう考えていけばよいのか」を、本書は具体的な方法として提案する。
見えてくるのは、ほかの誰でもない「自分の意志」だ。そういう自由をあなたにも味わってほしい





1. 機能する文章を目指す
・いい文章を書くとは、どういうことか


●目指すゴールを確認する
この第1章ではあなたと、本書が目指す文章のゴールを確認したい。

・よく働いて結果を出す文章
通常の履歴書。自分の長所を売り込む文章。後輩への指示書。
「状況を動かすために、よく働き、望む結果を出す文章」。
状況の中で、人との関係性の中で機能し、望む結果を出す文章たち。いわば、機能美の文章だ

豊かな表現力という幻想
文章の「ゴール」、つまり、その文章は、最終的にだれに読まれ、どうなることを目指すのか、に着目すると、驚くほど、いろいろなことが見えてきた。
文章の良し悪しは、目指すゴールによって違う。
もし、常に文章が苦手だと逃げている人がいたら、自分に、曖昧、かつ美しい理想を強いていないだろうか?

鑑賞でなく、機能する文章
今の文章教育に、生活の中で「機能する文章」という領域がすっぽり抜けているのを感じずにはいられなくなった。本書では、それを扱う。

・本書で目指す文章力のゴール
1編の完成された文章をまとめ上げることではない。
結果を出そう。
つまり、書くことによって、あなたがあなたの潜在力を活かし、読み手を共鳴させることだ。
ゴールのイメージが湧いたら、次に進もう。


●文章の7つの要件を押さえる
では、状況の中できちんと機能する文章を書くために、何と何を考えていけばいいのだろうか?

・意見
あなたが一番言いたいことは何か?

・望む結果
だれが、どうなることを目指すのか?

・論点
あなたの問題意識はどこに向かっているか?

・読み手
読み手はどんな人か?

・自分の立場
相手から見たとき、自分はどんな立場にいるか?

・論拠
相手が納得する根拠があるか?

・根本思想
あなたの根本にある想いは何か?

以上7つが、機能する文章を書くために考えなければいけないことだ。
第2章で一つ一つのより詳しい説明をしていく。


●文章の基本構成
実際文章を書く上で、基本となるのが次の3要素だ。
論点、論拠、意見。
日常のメモから、論文まで、かなりの範囲をカバーする文章の原則だ。




2. 7つの要件の思考法
・書くために、何をどう考えていくか



○意見
自分がいちばん言いたいことを発見する

文章の核は、あなたの「意見」だ。
考えることを通して、自分の内面を顕在化できないとき、人は静かに傷ついていくのだ。
意見は自分の中にある。必要なのは、それを引っぱり出す方法だ。


●意見とは何か?
意見とは、自分が考えてきた「問い」に対して、自分が出した「答え」である。
だが、私たちは、「問い」を意識しないまま、意見を言ったり、書いたりすることの方が圧倒的に多い

・なぜ、意見がでないのだろう?
自分では意見だと思っていても、まだまだ、前提であったり、感想であったりすることが多い。


●自分の意見を発見する方法
意見を出すには、考えることだ。

・考える道具を持つ
自分で「問い」を立て、自分で「答え」を出す、さらに、その答えに、新しい問いを立てる。
大きな問いに、いきなり答えを出そうとすると、考えるのがいやになってしまう

・「問い」で意見を引き出す ケーススタディ
「問い」を、自分でストックしておくのも手だ。「答え」の方は、意識しなくても探しているものだ。

・自分が抱いた「問い」のかけがえのない価値
学問も、問題解決も、「問い」ほ発見から始まる。


●問いを立てるエリアを広げていく
「問い」を立てているのに、考えが行き詰まってしまうことがある。

時間軸へと視野を広げる
今まで生きてきた自分、現在の問題点、3年後、5年後・・・・・・こうなっていたいというビジョンへと時間軸を移動しながら「問い」を立てていく。

空間軸へと視野を広げる
自身→自分の身の回り→会社→日本社会→世界・・・・・・と外に視野を広げて問いを立ててみよう。
行き詰ったときは、「問い」を立てるエリアをできるだけ広げてみよう。



○望む結果
何のために書くか?
結果をイメージすることが必要だ。

・高校生からの質問
「その子が欲しいのは、安心だと思いますよ」。
私は、はっとした。

・その文章、なんのために書くか?
安心を与える。
私の文章が目指すのはそこだ。



○望む結果を意識して書く方法
文章を書いていて、または書きだそうとして、自分が何を書こうとしているのかがわからなくなってしまうことがよくある

・何のために?を見失う例
自慢話になる。ヌケ、モレなく網羅しようとしてヘトヘトになる。興味のあるところばかり、詳しく書いてしまう。

・セルフチェックの観点
自分は今何を書いているのか?
だから、何なのか?
読み手にどうなってもらいたいのか?

・読んだ人に、どう言って欲しいか?
読み終わった後のつぶやきをイメージして書き始めるだけで、仕事の指示書は、コミュニケーション性を強く帯びてくる。

文章がうまいから、だからどうなのか?
それだけでは価値にならないと私は思う。
自分の書くもので人に歓びを与えられるかどうか?それを文章のゴールに設定していくといいのではないだろうか。



○論点
何を書くか? 集め方・絞り方・決め方


●論点とは何か?
「論点」とは、文章を貫く問いだ。

・かみ合わない会話
文章でも、会話でも、意見のあるところに必ず論点がある。
問題意識を共有していれば、どんなジャンルの、どんなことを持ってきても会話は成立する。

・文章における論点のすれ違い
会話と同様に、文章にも読み手と書き手のすれ違いはある

・論点を修正する
話題を変えなくても、文章の軌道修正は、論点を変えることでできる。

・読み手と自分の問題関心をキャッチする
相手の関心事をキャッチしつつ、それを、いかに自分の興味ある問いに発展させられるか、腕の見せ所だ。


●テーマと論点は違う
「論点」という発想は、日本人には、なかなか馴染みにくいものだ。

雑誌『BRUTUS』の例
テーマ       タイトル(論点)
男性ファッション   なぜ、日本男子はカジュアルが下手なのか?

これぞ、まさに論点だ。
読み手は、まだあなたの意見を読んでいなくても、問いの立て方だけで、あなた独自の見方、センスを感じ取るのだ。


●論点の2つの原則
・論点と意見は呼応する 原則1
論点と意見は、問いと答えの関係にある。
最終的に書き上げた文章の論点が一貫していること。「問い」を意識しつつ、文書を書く習慣をつけること
この2つのことに注意してほしい。

・論点は「問い」の形にする 原則2
疑問形にする。文章の書き出しに悩むときは、論点を書けばいい。文章のラストに悩むときは、論点に対する「答え」で締めればいい
すぐに試してみよう。

●論点の集め方・絞り方・決め方
つまり、「何を書くか?」を決める方法だ。

・論点の候補を集める ステップ1
問題を引いたように見られるようにしてあげたい。それには視点が必要だ。

・論点の候補を探す3つのエリア
読み手は何を求めているか。
テーマは何か。
それらに対して自分には何が書けるか。
「読み手」「テーマ」「自分」の3つが、探すべきエリアである。
行動としては、読み手を洗う、テーマを洗う、自分の中を洗い出す、となる。

・論点を絞る ステップ2
書き散らかしたメモを睨んでいくと、いくつかにグルーピングできる。
幹のような問いに、さらにいくつか疑問文を書き出してみる

・論点を決める ステップ3
論点を決めるとは、最終的に上がった疑問文の中から、1つを選ぶことだ。
一番大切なのは自分の動機だ。そして、それは読み手の要求からそれていないか。また、自分の力で扱いきれる論点かどうか。最後に、現在の社会、自分を取り巻く人の関係性の中で、論じる価値のある、何かよいものを生み出す問いかどうかを判断して、1つ選び取ろう



○関係性
自分の立場を発見する


●相手に応じて書き分ける
同僚、上司、後輩。同じメールでも反応は全て違う。

・関係の中に生まれる意味
人は、情報を受け取るときに、自分との関係や意味、損得などをついつい考えてしまう。
書くということは、あなたの外に向けられた行為だ。せっかくだから、外界にどんな意味を持つのか、考えて見た方がいい。関係性を考えるとは、まず、相手についての理解を深めること、次に相手から見た自分の立場を知ること

・相手を理解するための問い
同じことを書いても、結果が違うということは、3者に同じ結果(例えば「共感」というような)を出すためには、相手に応じて書き分けをしなければいけないということだ。


●相手の側から見る
恋愛感情、願望や欲、妄想、利害、無知のあるところ、自分と相手の関係の認識はズレやすい。

・相手と私の心の距離
相手との適正な人間距離(車間距離ならぬ)を保ち、礼儀正しく、時間と手間をかけて、自分のことも知ってもらい、相手のこともより理解し、相手側から見て、コミュニケーションの順番を立てていけば、やがては、本物の良い絆が結べるだろう。


●他者の感覚を知る
私がどう思うか?社会がどう思うか?私と社会はどう関わるか?

・社会に自分をどう位置づけるか?
社会性を身につけているかどうか、ということは、1つには、上記の関係性の中で、ものを書けるかどうかでチェックできると思う。
関係性の中で、自分の立場が見えてくれば、自分の書くものは、自分を取り巻く人間関係の中で、よく機能するに違いない。
書くためにはよく見なければいけない、自尊心がバラバラと崩れるまでに、痛いまでに。自分の都合とはまったく関係なく生き、動いている他者を、社会を、見ることだ。
自分の立場を発見するとは、世界の中の小さな自分を発見し、その生かし方を研究することだ。



○論拠
説得のためにいかに視野を広げるか?
どうすれば、人を説得できるのか?


●論拠を用意する 入門編
・理由はどこにあるのだろうか?
中学生の少年がお母さんにパソコンを買ってくれとねだっているところを想定してみよう。

・自分の理由を挙げる ステップ1
まず自分の買いたい理由を確認する。

・相手の都合から見た理由を想定する ステップ2
想像力を働かせ、相手側のメリットを打ち出していくことは、説得の際、必要なことだ。ただ、これでもまだ、論拠にはならない。

・相手側の反対理由を正しく押さえる ステップ3
「相手に理由を聞いてみる」。このあたりまえのことを、私たちは、以外に見落としていないだろうか。
突っ込んで聞いてみることだ。
洗い出し、優先順位の決定、後から別の理由を持ち出さないように確認しておく

・反対理由に合わせた論拠を準備する ステップ4
これで論拠を準備する方向は決まったようなものだ。
以上、
自分の理由を洗い出す。相手側のメリットをあげる。相手の反対理由を正確に押さえる。反対理由に焦点を合わせ、説得材料を見たり聞いたり、足を運んで調べる。相手にわかるよう筋道立てて論拠を提示する。


●説得のために視野を広げる
・なぜ抗議の声は届かないのか?
目標の設定が不明確ではないか?
手段の選択が安易ではないか?

・正論を押し付けても意味がない
多くの問題は、正しいことが正しいとわかっていても、どうしようもなくて起きてしまう
だから、正論を押し付けても意味が無いのだ。
いちばん必要なのは、具体的な「解決策」を打ち出すことだ。ただしこれは難しい。ならば、解決につながる「問い」を発するというのはどうだろう。
ここでも、必要なことは「論拠」だ。

・自分の実感、引っかかりを洗い出す
まず自分自身はどうなのか、実感を洗い出してみる
そして他者の意見も聞き、今何が問題なのか、自分自身の考えを打ち出すことだ。

・問題を多角的に見る
そのためにどうするか?今度は自分の考えをいったん置いて、外を見ることだ。多角的に見ることだ。
例えばこのように。
自分の体験、見聞を洗い出す。必要な基礎知識を調べる。具体的事例を見る。別の立場から見る。海外と比較して見る。歴史を押さえる(背景)。スペシャリストの視点を知る。

・再び自分自身へ
視野を広げて問題の全体像を見たうえで、どういう意見を出すかは、再び自分自身にかかっている。

論拠をどう配列するか?
優先順位は低→高。
具体→抽象。
時間的配列は、背景→現在→将来。
ミクロからマクロへ。個人の実感→社会問題→社会構造
賛否は、賛成反対の代表的意見の提示→両者の共通差異点→そこから見える問題点

集めた論拠を論理的に配列していこう。



○根本思想
自分の根っこの想いに忠実か?


●根本思想はごまかせない
書くときの根本にある、あなたの想いは、どんな想いだろうか。


●要約でわかる! 根本思想
・お母さんのひと言要約
「淋しいんだね、おまえ」
見事な要約だ。
自分の根本にある想いが知りたいなら、書いたものを極力短く要約してみよう。

・大事なものの順番が見えてくる
極端に短く言うことで、いらないものを捨てる、大事なものの順番がわかる。
「ひと言で言うと?」

・想いに忠実であること
自分の腑に落ちるまで、自分の生き方にあった言葉を探し、言葉を発見し、自分を偽らない文章を書くことによってのみ、読み手の心は動くのだ。




3. 伝わる・揺さぶる! 文章の書き方 実践編


●上司を説得する
どう書くか?を具体的につかんでいこう。
さて、上司の決定に反対のとき、あなたはどうするか?

・相手はこれを読んでどう思うか? チェック1
文章を出す前に、これを読んだ相手は、書き手である自分をどう思うか、ちょっと考えてほしい。

・一番言いたいことは何か? チェック2
自分が書いた文章から、「意見」を割り出してみよう。

・的確な論点が立てられているか? チェック3
何が正しいのか、間違っているのかに終始してはいけない。それは広がりのないつまらない「問い」だからだ。

・結果をイメージする ステップ1
否定を提案に変える。
だれにどうなってもらいたいか、スポーツのイメージトレーニングのように、理想の状況を思い描こう。

・論点を決める ステップ2
論点とは、文章全体を貫いている「問い」だ。いい意見を生むために、論点を修正する。

・意見をはっきりさせる ステップ3
いちばん言いたいことをはっきりさせよう。つまり、論点で立てた問いへ、自分の答えを出すことだ。

・論拠を用意する ステップ4
意見がはっきりしたら、あとは理由(論拠)を固く積み上げることだ。

・アウトラインをつくる ステップ5
オーソドックスな文章構成を示しておこう。
頭に、論点(これから何について書くか?)を書き、次に論拠を筋道立てて説明し、最後に意見を打ち出す。論点→論拠→意見という構成だ。

・読み手はこれで納得するか?
説得は相手の「理由」を知らなければ始まらない。この鉄則を思い出そう。
理由の「数が多い」、ということと「多角的にものを考える」こととは違う。

・自分の論へ反論する グレードアップポイント1
反論をするポイントは、自分の「意見」と「理由」。
自分で反論して自滅してしまう論なら、最初からそれだけの論だったのだ。

・相手の「論拠」を押さえる グレードアップポイント2
これは、可能であるなら本人に聞いてみるのが一番だ。
上司の指示に従うことが、組織の一般的ルールだと考えてしまいがちだが、それだけではだめだ。
自分の殻を破って、視野を広げてみよう。

・視野を広げる グレードアップポイント3
時間軸をさかのぼってみる。現代の社会に目を広げる。文献にもあたってみる。問題を整理する。再び自分自身へ。
限られた時間では、このように意識的に角度を変えてみると効果的だ。

・再反論のあるアウトライン グレードアップポイント4
より説得力のある論理構成にするためには、論拠を示し、それに対し相手から予想される反論を自分で示し、それに再反論する、という手続きをとることだ。

・自分の信頼性を高める グレードアップポイント5
相手の過去や、取り組む姿勢に、心から共感できることがあれば、それを文章の頭においてみるといい。
こういうことも、人間関係をスムーズにする術として、知っておいてよいことだ。


●お願いの文章を書く
人は、1人では生きていけない。
仕事の内容や目的は違っていても、依頼文にはいくつかの共通するポイントがある。

・依頼文の要素を決める ステップ1
自分が人からものを頼まれたとき、何が気になるか?ということを素直に考えて洗い出してみよう。
挨拶。自己紹介。志。依頼内容。依頼理由。条件。返事を伺う方法、締めの言葉等。
このうち条件などの具体的なところは、「要項」として別紙にまとめるといい。

・自分をどう信頼してもらうか? ステップ2
専門用語は、外から見てピンとくる表現に直す必要がある。
何を頼まれるかより、だれから頼まれるかの方が雄弁なときもある
自己紹介には最新の注意を払おう。

・やる気を引き出す依頼理由 グレードアップポイント1
やる気を引き出す方法はいくつかある。
志に共感してもらう。面白いと感じてもらう。相手がやる必然性がある。

・正直な依頼を グレードアップポイント2
依頼を成功させようとすると、つい、良いことばかりを書き、都合の悪いことは伏せておこうとしてしまう。

・依頼文の1人称 グレードアップポイント3
これから、お願いの文章を書こうというあなたに、最後に、次のことを聞きたい。
あなたはだれですか?
あなたと、相手と、組織と、顧客、それらの関係の中で、今、依頼をしている「私」は何者か?というあなたの立場を発見してほしい。
そのグッドバランスが最強の1人称になる。


●議事録を書く
社会人に成り立てのころ、そう言われて困った。私が書いたのは、議事録というより、ランダムな発言録だった。

・発言でなく論点に着目
議題を「問い」の形にして頭に大きくはっきり書く。これにつきる。
論点という発想が日本ではとても弱い。
「問い」と、「答え」の間には、その問いをどんな手順、方法で検討したか?(会議の流れ)、その問いに答えを出す上で、何を大事にしたか?(議事の要点)を、優先順位を決めて、大きなものから3つ程度書けばいい。優先順位をつけるのが仕事だ。

・前後の流れを明示する グレードアップポイント1
その会議の、1つ前と、1つ後の展開を書いておくと議事録としては、より役に立つものになる。

・会議の位置付けを書く グレードアップポイント2
「問い」に対してどうする会議なのか?それも書いておくとわかりやすい。

・「今後の課題」を疑問文で書く グレードアップポイント3
次回の会議の議題よりも大きな、方向性だ。これもやはり疑問文の形にして、はっきりさせよう。

・良い会議のアウトライン
会議やミーティングを成功させる秘訣も、文章と同様、「問い」にある。これによって、メンバーの会議への意識をグッとアップさせることだってできるのだ。


●志望理由(自薦状)を書く
「まじめに努力していれば、いつかきっと、だれかが気づいてくれる」。この考えは、イエスであり、また、ノーだ。

・「どこでもいいんじゃないの?」
こういった志望理由を、選ぶ側から見るとどうだろうか?
「志望理由が、考えつかなかったら、以下の問いで自問自答してみてください」。わたしはこんな返信をした。

・志望理由を固める質問(大学編)
「なぜ、その大学か?」は、大きすぎる「問い」だ。だから、一発で答えをだそうとすれば、陳腐な答えになるか、考えるのがいやになってしまうかのどちらかだ。
過去→現在→未来、自分→日本社会→世界と、時間、空間を移動させていくとよい。

・キーを見つける
相手と自分を連結する「キー」を見つける。これが、志望理由書の一番のポイントだ。
大学であれば「学部・学科」。
仕事であれば「分野・職種・業種」だろう。

・志望理由を固める質問(仕事編)
これらのキーを変えて、自問自答してみよう。

・まだやっていないことを書く難しさ
「学部」であったり「分野」であったり、キーとなることについて、広く社会のこれからを見つめ、業界全体を見つめ、自分を見つめる。一見、遠回りなようで、この作業をしておくことがいちばん大切だ。

・なぜ、そこを選んだのか? グレードアップポイント1
ここでもキーが必要だ。
大学であれば教育方針、企業であれば事業方針や理念がキーになる。

・固有の長所を言葉にする グレードアップポイント2
「何かがいやだから、これにしました」というなし崩し論法はやめよう。
やはり、他がどんなに優れていようと、先方が持つ、かけがえのない魅力を、言葉で表現しなくてはいけない。そうすることで相手そのものへの理解の深さをアピールすることができる。

・受け入れ側のメリットは? グレードアップポイント3
自分の志が「他者」にとっても意味あることであるといい。
自分、大学・会社、社会の関係性を認識して、それをはっきりと打ち出すことは、志望理由書のはずせないポイントだ。

・志望理由書の要件
志望分野をとりまく社会認識。志望分野との関係における自己認識。先方を選んだ理由。
これら3要件が入っていれば、順番は自由に考えていい。いろいろなパターンを工夫してみよう。


●お詫びをする
「リーダーの仕事は、決めるとこ決めて、謝るとこ謝る」。異動する同僚が残していった言葉だ。
ミスをしない人間などいない。創造的に生きるほど、責任の範囲が増えるほど、お詫びの機会は多くなる。
誠意がこもっているとかいないといった精神論や、人間性の問題で、片付けてはいけない。

・機能構造をどう組み立てるか?
謝罪→相手側から見る→罪を積極的に認める→原因を究明する→対策を立てる→償いをする→再度、謝罪。
問いを立て、視点を動かしながら、思考を前にすすめるという作業は、お詫び文だけでなく、どんな文章を書く上でも欠かせない。

・お詫びが目指す結果、要素とは?
私が考えるお詫びの要件はこの3つだ。
反省→謝罪→償い。
これが、お詫びの最もシンプルな構造だ。

・お詫びの文章テンプレート
たたき案
謝る→相手側から見るステージ→罪を積極的に認めるステージ→原因のを究明するステージ→将来に向けた修正を示す→どう償うかを示す

・お詫びの1人称 グレードアップポイント
お詫び文の「1人称」は、私たち、私ども、弊社などを一切使わず、一貫して、「私」を使用するといい。
「私がやったこと」なのだから。

●メールを書く
メールの原則は「わかる」ことだ。

・メールは「シーソー」だ
別に難しいことが書いてあるわけではないのに、わかりにくいメールをもらった経験はないだろうか。
わかりやすくするためには、考えることが必要だ。

・一番言いたいことは何か決める ステップ1
要件のメールでは、意見を文章の頭にはっきり書こう。

結論から申し上げます。デザイン料を上げていただきたいのです。

で始めて問題はない。

・論拠を決める ステップ2
意見と論拠の原則はメールでも変わらない。
意見と論拠を決めれば、一応「わかる」メールになる。

・相手にとっての意味を決める グレードアップポイント1
「相手にとっての意味」はメールのいちばん頭、意見の前に書くか、もしくは意見と合体させて「予算を上げていただきたく、お願いのメールを差し上げました・・・・・・」と1文にしてもいい。

・相手にひと目でわかるタイトル グレードアップポイント2
「秋の特別号依頼の報告まで(長め、お暇な時に)」
このようにタイトルは、「論点」+「相手にとっての意味」からアレンジし、なるべく客観的な表現(引き)で決めるとよい。

・引き受けるという感覚
メールには、愚痴は書いてはいけない。仕事を受けるなら受ける。量が多くてやめるならやめる。「いつ」「だれが」「どうする」を基本に、考える作業を引き受け、自分なりの結論を出し、「提案型」で書くと良い。

・受動態はつかわず、人間を主語にする
主語を人間にして書く習慣を身につけることで、わかりやすい文章を書くことができ、自分が行動主体になる、責任を負うという感覚も育つわけだ。




4. より効果を出す! テクニック 上級編


●引きの伝達術
あなたの書く文書の読み手を「おいてきぼり」にしないために、「2歩前提に引いて見ること」を提案したい。
初歩的なところで話に入ってこられない人がいることを事前に想定して、その人たちが、すんなり入ってこられるように、案内板や、はしごのようなものを、文中に用意してあげるのだ。

・1つ前のプロセスを共有する
「今年」の話をするなら「去年」のことを、「来期の戦略」に入るのなら「今期の戦略」を、「意見」がほしいのなら「問題点」を。
読み手から何か意見やアイディアを引き出したいのなら、「意見」をもらう以前の、「そもそも、何が問題なのか?」を共有しておく必要がある。

・数えられる側は不安でいっぱい
教える側が当然のように様々な作業を課し、教わる側はだまってやる、という風景は、日常でよく見られるが、それでは教わる側は、不安でいっぱいだ。

・教える側のねらいまで伝える
教える側と教わる側が、最初にゴールを共有するといい。
教える内容をあらかじめ伝えておくだけでなく、そこからさらに1歩引いて教える側にねらいまでを伝えておくこと、これが「引き」の伝達術の2番めのテクニックだ。

・あえて素人の目線をつくる
専門家になってしまうと、わからない人の、わからないという気持ちがわからない。
「引き」の感覚は、相手に確実に伝え、結果を出すために有効だ


●動機をつくる
・内容がいいだけでは読んでもらえない
それは大前提、しかし、それだけでは読んでもらえないのだ。

・人はどんな時にアクションを起こすか?
読み手の側から考えると、日々の生活の中に向かう動機のないものは、読みたくてもなかなか読めないのだ。
読み手は文章を全部読んで、いいか悪いかを決めるのではなく、ぱっと見て読むか読まないかを決める。だから「読みたい」という気持ちをしっかり引き出すことが必要になる。

・読む気を引き出す文章の書き方
それは文章の書き出しにかかっていることが多い
いくつか方法がある。
効能を示す。相手にとって切実・身近な話題とリンクさせる。タイムリーな話題とリンクさせる。面白そうな独特の世界を醸す。
「動機」の引き出し方としてうまくないのは、「・・・・・・しないと・・・・・・できなくなる」という論法だ。


●やる気をわかせる指示の出し方
同じ仕事をふるのに、一瞬でやる気をなくさせる言い方と、やる気を奮い立たせる言い方。この差はどこから生まれるのだろうか?

・意味、流れ、関係で伝える
やる気を出させるポイントは、相手にやってもらうことを、「流れ」と「関係」の中で説明し、相手にそれをやる「意味」を発見してもらうことだ。

・いきなり「なぜ?」は難しい問い
遠回りの法則で、自分と部下のにらみ合いから、次のように視野を広げてみてはどうだろう。

・「つながり」を見つける6つのキー
昨日→今日→明日、私→グループ→社会。その「つながり」に着目して話すと、「意味」が出てくる。
つながりを見つけるときのキーは、次にあげる6つだ。
流れ(過去→現在→未来)
相手の歴史。グループの歴史。社会の歴史。
関係(社会→グループ→相手)
社会とグループ。グループと相手。相手と社会。
以上6つの視野に、これからお願いしようとする「仕事」を乗せてみると、どこかに「意味」が出てくる。

●思考停止ポイントを発見する
自分の頭でものを考えるとは、常に「揺らぎ」続けることでもある。

・「揺らぎ」を止めてしまうひと言
自分の思考停止ポイントを発見する問いがある

いま自分が、信頼を寄せている存在は?その人の言うことを咀嚼しないで人に広めていないか?
自分が優れていて、他人が劣ると思うのはどんなときか?
最近、人に何かを強く勧めたか?
会議や会話で自分が連発する言葉はあるか?
自分の発言の中で「絶対」をつけるものは何か?
自分のモットーは何か?

これらの問いは充分ではないが、思考の動脈硬化に気づくヒントにはなると思う。




5. その先の結果へ


●戦略的なコミュニケーション
これには思わぬ落とし穴がある。戦略を誤った努力は虚しい。

・感情を犠牲にするか、孤立するか?
あなたは、意識的・無意識的に、どんなコミュニケーション戦略をとっているだろうか?
望んでいるのは本当にその結果だろうか?

・正直という戦略
文章を書く上でも、正直は、最も有効な戦略だと、私は思う。


●言葉という不自由な道具
自分を表し、人とつながる主な手段として私たちに与えられているのが、この、言葉という不自由な道具なのだ
だから、相手と向き合ったとき、そこには巨大な誤解ゾーンが横たわっている。


●存在を形作る「なんか」
コミュニケーションにおいて、人から見られる自分ではなく、自分が目指す自分にあわせようとして表現を練っていくと、相手との溝をとても大きくしてしまうことがある
あなたは、まわりからどんなふうに見えているか、どうやってつかんでいるだろうか。
1人の人間が語る言葉や文章の背後には、その人を形づくる、構造的な「なんか」が常にひかえているのだ。


●誤解されずに想いを伝える
キーワードの定義だ。
「いまさら言うまでもないことだ」とか、「照れるから」と言って逃げず、畏れず、私は、日ごろあなたをこう見ている、あなたの仕事を私はこう受け取っている、という根本思想をコミュニケーションのはじめのところではっきりと示していこう。
そうすれば、大切な人とのコミュニケーションは、もっとずっとブレなく、スムーズになっていくはずだ。




エピローグ あなたと私が出会った意味
あなたが好きな人に、プレゼントをあげるとしたら、次の、どの方法を採るだろう?

自分のあげたいものをあげる。
相手に「何がほしい?」聞くか、事前に趣味をよく調べ、相手が欲しがっているものをあげる。
相手のこれまでの趣味にない、新しい引き出しを開けるようなものをあげる。

・自分という存在が関わる意味
相手に聞いて、相手の要求にはまったプレゼントをあげるということは、裏を返せば、「相手は放っておいても自分でそれを買ったかもしれない」ということだ。
自分という存在が、関わる意味はなんだろう?

・メッセージを伝える
他にない、自分らしいメッセージを創り出し、それが読み手に届く形になるまでには、熟練が必要だ。時間もかかる。

・あなたにしか書けない、かけがえのないもの
多くの場合、自分に湧き上がってくるものは、自分と相手のギャップによって生じるメッセージだから、ときに相手に歓迎されず、違和感やざらつきを与えるかもしれない
それでも違和感という形で、ときに反発という形で、相手の潜在力を揺り動かすことができれば、相手を生かし、自分を相手の中にいかしたことにほかならない

あなたには書く力がある。

本気でそれを伝えるために私はこの1冊を書いた。
あなたの書いたものに、私はいつ、どんな形で出会えるだろうか?


【書評】

『あなたには書く力がある。本気でそれを伝えるために私はこの1冊を書いた』。
これほどまでにシンプルで、なおかつ力強い文章があるだろうか。
本気で誰かにものを伝えるには、厳しい訓練が必要なのだ。厳しい訓練をしたからこそ、はっきり自信を持って意見を言えるのだ。山田氏には使命がある。悩みの中でそれを見出した。そう、われわれにも使命があるのだ。『あなたが会社の利益を殺す犯人だ!?』にも同じ意味の言葉がある。認識し、理解し、責任をもって、「書く」というミッションに取り組まなければならない。そう、われわれはプロフェッショナルなのだ。
使命はもって生まれたものではない。自らで考え、悩み、見出すものだ。この書籍は文章力の向上に役立つのはもちろん、書くということに対する精神も教えてくれる。正直であること。それは、文章を書くにあたって大樹の根っこのように重要なことである。

追伸
これは60分では読みきれませんね。





【印象に残った言葉】
『原因のない失敗はない。』

『最低限、だれがどう行動するかまでは打ち出そう。』

『そこの生徒たちは、意味が不明の作業をさせられることをとても嫌がった。だが、ひとたび意味がわかり、納得すれば、自主的にどんどん学習を進めていく。』

『頭が疲れると、つい、信条のようなものに結論を持っていこうとする。・・・・・・極めて優等生のつまらない文章になってしまう。・・・・・価値観が無自覚なままに入り込んでしまう。・・・・・・学識やデータも、思考停止ポイントになりやすい。』

『編集の新米の頃の自分は、いただいた原稿の感想に、「素晴らしい」を連発していた。・・・・・・・逃げていることに気がついた。・・・・・・「素晴らしい」使用禁止令をだした。』

『でも翌日、私は、その仕事への興味や意欲を失っている自分に気づいた。それだけでなく、生きるエネルギーみたいなものがしぼんでしまったような気がした。・・・・・・私は、戦略をまちがっている。』

『まるくなれ・・・・・・さっさとバカになっちゃった方が勝ちよ。・・・・・確かにこの方が、ラクに早く相手に好かれる。でも、どうしても、私はこれができなかった。だからこそ、考え、表現し、伝えることをライフワークにしてきたのだ。』

『自分を偽ることなく外界と関わっていけるということは、極めて自由なことだと私は思う。』

『自分の想いを殺して表面的な結果を得ても、それは相手をうそで操作しているだけで、内的な満足にはなり得ない。 』

『正直という戦略をとる。つまり、自分に忠実でありつつ、かつ人と関わることを目指す。そのためには、厳しい文章術の鍛錬が必要だ。 』

『コミュニケーションにおいて、人から見られる自分ではなく、自分が目指す自分にあわせようとして表現を練っていくと、相手との溝をとても大きくしてしまうことがある。 』