正論をいう無職

有職になった

1分でわかる『20歳のときに知っておきたかったこと』



【1分でわかる】
1. スタンフォードの学生売ります
問題を可能性というレンズで捉えましょう。

2. 常識破りのサーカス
問題は問題でなくチャンスだと気づくのです。

3.ビキニを着るか、さもなくば死か

ルールは破られるためにあります。

4. 財布を取り出してください
慎重に様子を見るのではなく、チャンスをつかみに行くのです。

5. シリコンバレーの強さの秘密
失敗は学習のプロセスのひとつです。

6. 絶対いやだ!工学なんて女がするもんだ
あなたにとって何が正しいかは、あなた自身が見極めるのです。

7. レモネードがヘリコプターに化ける
努力によって、自分で幸運を呼び込ましょう。

8. 矢の周りに的を描く
つねに感謝の気持ちを表しましょう。

9. これ、試験に出ますか?
ベストを尽くすチャンスは一度しかないのです。

10. 実験的な作品
将来が不確実なのは歓迎すべきことなのです。


【10分でわかる】
1. スタンフォードの学生売ります
手元に五ドルあります。二時間でできるだけ増やせと言われたら、みなさんどうしますか?
元手がないのにお金を稼ぐには、どうすればいいのでしょうか?
そのときに学生がやったことのひとつが、
スタンフォードの学生売ります  一人買えば、二人はオマケ」
でした。
当たり前とされていることを疑って、何もない状態から価値を生み出す。この演習の成果からいくつも意外な点が浮かび上がってきました。
いまある資源を使って、それを解決する独創的な方法はつねに存在する。ブラインドをあげれば、可能性に満ちた世界が広がっている。
問題を可能性というレンズで捉えることが学生を変えていきました。
チャンスを見極め、物事に優先順位をつけ、失敗から学ぶことで、人生はめいっぱい楽しむことのできるものとなります。
この本で目指しているのは、読者のみなさんに新しいレンズを提供し、そのレンズを通して、日常の困難を見つめなおし、将来の進路を描いてもらうことです。困難は、実はチャンスなのです。

2. 常識破りのサーカス
日常のなかで問題にぶつかったとき、これはチャンスだと思わないのはなぜなのでしょう?
問題に新たな光を与えることのできるレンズで見るという選択を、あなたは選ぶことが出来ます。問題は数をこなすほど、自信を持って解決できるようになり、やがて楽に解決できるようになると、問題は問題でなくチャンスだと気づくのです。
まず、問題を明確にすることです。問題を明確に定義できれば、その解決策はおのずからあきらかになります。
起業家精神とは、世の中にはチャンスが転がっていると見ること」です。まず必要なのは、問題は必ず解決できる、という気概を持つことです。問題と格闘した経験が積み重なっていけば、必ず解決策が見つかると自信が持てるようになるものです。
身近な問題はチャンスに変えられるのだという確かな証拠が、いたるところにあるのです。

3.ビキニを着るか、さもなくば死か
生きていくうちに、わたしたちには「ルール」が染み付いていきます。自分に何ができそうか考えるときにも、自然と自分に枠をはめています。頭のなかで決めたこの限界は、社会に課されるルールよりも、ずっと強制力が強いものです。
ルールは破られるためにある。こうした考え方が集約されているのが、よく耳にするフレーズ「許可を求めるな、許しを請え」です。最低限守るべきものはヒントにはなりますが、ルールは疑ってみる価値はあります。
ルールを破る方法があります。自分自身に対する期待、そして周りからの期待を裏切るのです。ルールがあれば安心ですが、それが足枷になることもまた多いのです。
用意された道にとどまった方が楽なのは誰もが認めます。ですが、その先の角にある意外な世界を見つけるほうがずっと面白いものです。
ふだんはレシピどおりに料理し、大通りを運転し、踏みならされた道を歩いても一向に構いません。でも、常識は何かを考え、見なおそうとすれば、そして、自分に投影された自分自身や周りの期待を裏切ってもいいと思えれば、選択肢は限りなく広がります。
「決まりきった次のステップ」でないことをするには訓練が必要です。あなた自身がエネルギーと想像力を解放してあげればどこまでも行ける、ということです。

4. 財布を取り出してください
人間は二つのタイプに分かれることがわかってきました。自分のやりたいことを誰かに許可されるのを待っている人たちと、自分自身で許可する人たちです。
埋められるのを待っているすき間はつねにあり、チャンスが詰まった金塊は地面に転がっていて、拾われるのを待っているのです。金塊は、それを拾おうという前向きの気持ちを持っている人のために、そこにあるものです。
成功を阻む最大の壁は、自己規制です。
宝くじは、買わなければ当たらないのです。誰も成功するためのツールを授けてはくれません。
成功者には、指紋のようにひとりひとり違った、個性的な物語がありました。リーダーになろうと思ったら、リーダーとしての役割を引き受けることです。ただ自分に許可を与えればいいのです。チャンスはつねにあり、見つけられるのを待っています。慎重に様子を見るのではなく、チャンスをつかみに行くのです。

5. シリコンバレーの強さの秘密
赤ん坊はどうやって歩き方を覚えるのでしょうか。ハイハイから始めて、つかまり立ちをするようになり、何度も転んで、ようやく歩けるようになります。大人だからといって、最初から正しくできるはずだと期待するのはおかしいのではないでしょうか。
駄目だと思ったら早めに見切りをつけることも重要です。
何かをやめると、じつは驚くほど元気がでます。やめることの最大の利点は、まっさらな状態からやり直せることです。
わたしがたどり着いた、もっとも科学的な結論はこうです。「心の声に耳を傾け、選択肢を検討しなさい」。まずは、自分自身と正直に話し合わなければなりません。自分に聞いてみるのです。
何もしないことは最悪の類の失敗です。想像力は行動から生まれるのです。何もしなければ何も生まれません。
3Mのポストイットも、元々は、ただの粘着力の足りない失敗作だったのです。
リスクを取ってうまくいかなかったとしても、あなた自身が失敗者なのではない、ということも覚えておいてください。
「失敗したからといって自分が失敗したわけではない。あるいは成功したときですら、自分の成功ではない。会社や製品は失敗することがあっても、自分が失敗者なのではない」のです。失敗は学習のプロセスのひとつです。失敗していないとすれば、それは十分なリスクを取っていないからかもしれません。

6. 絶対いやだ!工学なんて女がするもんだ
成功には情熱が必要です。ですが、情熱は出発点に過ぎません。自分の脳力と、それに対する周りの評価を知っておくことも必要です。
情熱とスキルが市場が重なりあうところ。それが、あなたにとってもスウィート・スポットです。
自分のスキルと興味と市場が重なりあう金鉱を見つけるには、ある程度時間がかかります。
身近な人たちは、キャリア・パスを決めたら、そこから外れないように期待するものです。昇順を定めたら、あくまでそれを追い求める「うちっ放し」のミサイルであるよう求めるのです。でも、物事はそんな風にはいきません。
ぴたりとはまる役割を見つけるには、実験を繰り返し、多くの選択肢を試し、周りから暗に受け取っているメッセージを検証し、正しくないと思えば突っぱねることが必要です。
行先が見えなくても心配しないでください。目を細めても視界がはっきりするわけではありません。キャリアについてあれこれアドバイスされても、うんざりしないでください。あなたにとって何が正しいかは、あなた自身が見極めるのですから。


7. レモネードがヘリコプターに化ける
「幸運なんてものはないよ。すべては努力次第だ」「努力すればするほど、運はついてくる」。
これは共通したメッセージです。成功する確率がとても低く、競争がどれほど激しくても、体と頭と心を十分に鍛え、準備すれば、可能性を最大化できるのです。
これまでの章ではレモン(=問題)をレモネード(=チャンス)に変える方法を紹介しました。でも。幸運はそれ以上のことをしてくれます。レモネード(=よいこと)をヘリコプター(=すばらしいこと)に変えてくれるのです。
自分が得た知識を、目の前のやるべきことに注ぎこみ、経験のないことでも、やらせて欲しいと頼む度胸が必要かもしれません。大きな舞台を夢見ながら、いま居る場所と、目指す場所との距離の遠さに怯んでしまう人もいます。でも、身近なチャンスをひとつひとつモノにすることで、ゆっくりとではあるけれど確実にステージは上がり、そしてその度に最終目標に近づいていきます。訪れた機会を歓迎し、チャンスが舞い込んだら最大限活かし、身の回りの出来事に目を凝らし、できるだけ多くの人たちとつきあい、そして、そのつきあいをできるだけいい方向で活かす。これが、自分で幸運を呼び込み、悪い状況を好転させ、いい状況をさらに良くする方法なのです。

8. 矢の周りに的を描く
一〇歳の誕生日に母からもらった一束のカードが、わたしにとって最高の贈り物になるなんて誰が想像できたでしょう。母は一〇歳のわたしに、お礼状の書き方と、お礼状を書くことがいかに大切かを教えてくれたのです。
ほんのすこしの心がけで、自分でつくりがちな障害や落とし穴を簡単に避けられるようになります。最善の方法のひとつは、自分を助けてくれる人に対して、つねに感謝の気持ちを表すことです。引き出しには買いだめした「サンキュー・カード」を入れておき、こまめにカードをおくりましょう。そして一言「申し訳ございませんでした」と言えるように、謝り方を覚えましょう。あらゆることは交渉可能であり、すべての当事者が活用な方向で交渉することを覚えましょう。他人の強みを活かし、得意なことができるようにしましょう。賢明なことでなく、正しいことをしておけば、後々、胸を張って話せます。最後に、あれもこれもと欲張りすぎないように。

9. これ、試験に出ますか?
「光り輝くチャンスを逃すな」。この言葉が驚くほど学生に心に残ったようです。学生たちは、潜在能力を最大限に発揮し、場外ホームランを打ち、聡明さを輝かせてもいいという許可を渇望しているのです。
人生にリハーサルはありません。最高の仕事をするチャンスは一度きりです。光り輝くとは、いつでも期待以上のことをすると決意することです
本気で何かをしたいのなら、すべては自分にかかっているという事実を受け入れなければなりません。したいことを、優先順位の上位にもってくるか、さもなければリストから外すべきです。
光り輝く方法は一様ではありません。ですが、すべては限界を取っ払い、持てる力を遺憾なく発揮しようとするところから始まります。人生にリハーサルはありません。ベストを尽くすチャンスは一度しかないのです。

10. 実験的な作品
種明かしをすると、これまでの章のタイトルはすべて、「あなた自身に許可を与える」としてもよかったのです。わたしが伝えたかったのは、常識を疑う許可、世の中を新鮮な目で見る許可、実験する許可、失敗する許可、自分自身で進路を描く許可、そして自分自身の限界を試す許可を、あなた自身に与えてください、ということなのですから。じつはこれこそ、わたしが二〇歳のとき、あるいは三〇、四〇のときに知っていたかったことであり、五〇歳のいまも、たえず思い出さなくてはいけないことなのです。
実験し、失敗し、もう一度トライしてもいいのです。わたしたちの誰もが認識すべきなのは、ひとりひとりがおなじように許可されているということです。許可をするのは自分であって、外から与えられるものではありません。わたしたちはこの点を知りさえすればいいのです。
人はそれぞれ、世の中をどう見るかを自分で決めています。どういう精神状態にあるかで世の中はまったく違って見えるのです。身の回りには、割れ目も花もあふれています。どちらを見るかは、わたしたちひとりひとりが決めているのです。
不確実性こそ人生の本質であり、チャンスの源泉です。不確実性こそが、イノベーションを爆発させる火花であり、わたしたちを引っ張ってくれるエンジンなのです。
この本の物語で伝えたかったのは、快適な場所から離れ、失敗することをいとわず、不可能なことなどないと呑んでかかり、輝くためにあらゆるチャンスを活かすようにすれば、限りない可能性が広がる、ということでした。もちろん、こうした行動は、人生に混乱をもたらし、不安定にするものです。でも、それと同時に、自分では想像もできなかった場所へ連れて行ってくれ、問題がじつはチャンスなのだと気づけるレンズを与えてくれます。何よりも、問題は解決できるのだという自信を与えてくれます。
二五年前にわたし自信が書いた詩を読んで思い出すのは、二〇代の頃、次のカーブに何が待ち受けているのかわからなかったが故に抱いた不安です。将来が不確実なのは歓迎すべきことなのだと、誰かが教えてくれればどんなにかよかったのに、と思います。予想できる道を外れたとき、常識を疑ったとき、そしてチャンスはいくらでもあり、世界は可能性に満ちていると考えることを自分に許可したときに、とびきり面白いことが起きるのですから。


【60分で理解する】
1. スタンフォードの学生売ります
手元に五ドルあります。二時間でできるだけ増やせと言われたら、みなさんどうしますか?
宝くじを買ったり、レモネードスタンドを開いたり。
元手がないのにお金を稼ぐには、どうすればいいのでしょうか?
身近な問題を発掘したチームがありました。レストランにかわりに並んだり、タイヤの空気圧を無料で調べたり。それらはうまくいきました。
一番うまくいったのはクラスの学生を採用したいと考えている会社に、その時間を買ってもらったチームでした。
この五ドルの挑戦は、一〇個クリップにかわり、そのときに学生がやったことが、
スタンフォードの学生売ります  一人買えば、二人はオマケ」
でした。
当たり前とされていることを疑って、何もない状態から価値を生み出す。この演習の成果からいくつも意外な点が浮かび上がってきました。
「問題が大きければ大きいほど、チャンスも大きい」。いまある資源を使って、それを解決する独創的な方法はつねに存在する。ブラインドをあげれば、可能性に満ちた世界が広がっている。
問題を可能性というレンズで捉えることが学生を変えていきました。
学校とは違い、社会には答えがありません。ですが、社会では失敗が許されます。
自分自身を、そして世界を新鮮な目で見る。チャンスを見極め、物事に優先順位をつけ、失敗から学ぶことで、人生はめいっぱい楽しむことのできるものとなります。
この本で目指しているのは、読者のみなさんに新しいレンズを提供し、そのレンズを通して、日常の困難を見つめなおし、将来の進路を描いてもらうことです。困難は、実はチャンスなのです。

2. 常識破りのサーカス
日常のなかで問題にぶつかったとき、これはチャンスだと思わないのはなぜなのでしょう?
それはそもそも、問題を歓迎するような教育を受けていないからです。
問題に新たな光を与えることのできるレンズで見るという選択を、あなたは選ぶことが出来ます。問題は数をこなすほど、自信を持って解決できるようになり、やがて楽に解決できるようになると、問題は問題でなくチャンスだと気づくのです。
本物のイノベーターは問題に真正面からぶつかり、常識をひっくり返します。
成功した起業家のエピソードを聞いたら、彼らを特別視するのではなく、ヒントにしましょう。見方を変えてもいいのだと自分に許しさえすれば、問題は解決できることを示してくれたのだと。
何もしないのと、何かをするという二つの選択肢を切り替えるのは、ほんの小さなスイッチですが、選択の結果は大きく違ってきます。
身近なモノを適当に選んで、どうすればそのモノを使って困っていることが解決できるか考えてもらう授業をしました。身近なところに、意外な解決策があるのです。慣れという常識によって、現状をよく知る人間はそれ以外のことが想像できないことがあるのです。
まず、問題を明確にすることです。問題を明確に定義できれば、その解決策はおのずからあきらかになります。ニーズを掘り起こすのに必要なのは、世の中のギャップを見つけ、それを埋めることです。
シルク・ドゥ・ソレイユは、既存のサーカス団にかかわる常識のことごとく逆を行なって、衰退産業という問題をチャンスに変えました。大事なのは、時間をかけて、常識だと思われていることを洗いざらい挙げていくことです。粘り強くやれば、目の前の選択肢を新鮮な目で見られるようになります。ときには、完璧で乗り心地のいい列車を降りる決断も必要かもしれません。行き先が違っているときもあるのです。
起業家精神とは、世の中にはチャンスが転がっていると見ること」です。金儲けをしたいからというのではなく、情熱をもつことが大事です。宣教師のような情熱で解決策を見つけようとすることによって、成功する企業が生まれます。ガイ・カワサキは「カネを稼ぐよりも、意義を見つける方がいい」と言っています。大きな問題を、これまでにない方法で解決して使命を果たすことを目標に掲げれば、最初から金儲けを目指すよりも、儲かる可能性はずっと高いのです。だからまず必要なのは、問題は必ず解決できる、という気概を持つことです。問題と格闘した経験が積み重なっていけば、必ず解決策が見つかると自信が持てるようになるものです。
新聞記事を検索して問題を見つけるのもいいでしょう。身近な問題はチャンスに変えられるのだという確かな証拠が、いたるところにあるのです。

3.ビキニを着るか、さもなくば死か
生きていくうちに、わたしたちには「ルール」が染み付いていきます。自分に何ができそうか考えるときにも、自然と自分に枠をはめています。頭のなかで決めたこの限界は、社会に課されるルールよりも、ずっと強制力が強いものです。
グーグル共同創業者のラリー・ペイジは「できないことなどない、と呑んでかかることで、決まりきった枠からはみ出よう」と言っています。大きすぎて挑めない問題などないとして、周りの意見はどこ吹く風で、自分の行きたい場所にさっさと旅立つ人がいます。「エンデバー」を立ち上げたリンダ・ロッテンバーグは「あなたはどうかしている」と人から言われたら、いい線を行っている証拠だと考えます。
「不可能に思えること」に挑戦するうえで、いちばん邪魔になるのは、周りから「できるわけがない」と端から決めてかかられることです。
イデアに「悪い」ものなどない。そう考えられたらブレイン・ストーミングは成功です。アイデアを上下逆さまにしたり、裏返しにしたり、常識から外れてもいいのです。
イデアを思いつくには、可能性の海を探索しなければならない、ということを肝に銘じておいてください。
ルールは破られるためにある。こうした考え方が集約されているのが、よく耳にするフレーズ「許可を求めるな、許しを請え」です。最低限守るべきものはヒントにはなりますが、ルールは疑ってみる価値はあります。
すべきことをあれこれ挙げていくよりも、絶対にしてはいけないことを知っておくほうがいい。そして、ルールと助言の大きな違いも知っておかなければいけません。
ルールを破る方法があります。自分自身に対する期待、そして周りからの期待を裏切るのです。ルールがあれば安心ですが、それが足枷になることもまた多いのです。
用意された道にとどまった方が楽なのは誰もが認めます。ですが、その先の角にある意外な世界を見つけるほうがずっと面白いものです。通常の道は、選択肢のひとつに過ぎないことを覚えておいてください。ふだんはレシピどおりに料理し、大通りを運転し、踏みならされた道を歩いても一向に構いません。でも、常識は何かを考え、見なおそうとすれば、そして、自分に投影された自分自身や周りの期待を裏切ってもいいと思えれば、選択肢は限りなく広がります。
「決まりきった次のステップ」でないことをするには訓練が必要です。あなた自身がエネルギーと想像力を解放してあげればどこまでも行ける、ということです。

4. 財布を取り出してください
二〇年前、わたしが本を書くつもりだと友人に打ち明けたとき、「どうして、本なんて書けると思うわけ?」と驚かれました。たしかに大それた目標です。でも、やってみない手はありません。わたしは料理の科学についての一般的な読み物を書こうとしていました。わたしはその道のプロではありませんでしたが、科学者なので、追々、勉強すれば材料はなんとかなると思いました。そして、最後にはそれは実を結びました。誰に言われたわけではありません。・・・・・・わたしはただ、やったのです。
人間は二つのタイプに分かれることがわかってきました。自分のやりたいことを誰かに許可されるのを待っている人たちと、自分自身で許可する人たちです。
埋められるのを待っているすき間はつねにあり、チャンスが詰まった金塊は地面に転がっていて、拾われるのを待っているのです。金塊は、それを拾おうという前向きの気持ちを持っている人のために、そこにあるものです。
ほかの人なら避けて通るような溝に橋を架け、穴を埋めた人、ほかの人なら避けて通る役割を自らに課した人たちに、これまで大勢会ってきました。
新しい分野に移る場合、それまで身につけたスキルを活かす方法を見極めるのが、最善の方法のひとつだと言えます。脳の研究と経営コンサルティング、なにが共通しているでしょう。火急の問題を特定し、関連データを集め、それを分析すること。そして、結果のなかからとくに興味深いものを選び出し、説得力のあるプレゼンテーションを考え、次なる火急の問題を決めることです。新しい分野にも、自分のスキルが活きる方法が、必ずあるのです。
他人が迂闊にも投げ捨ててしまったプロジェクトも、磨けば光る原石かもしれません。改良すべき点があるはずだと思って見ていると、限りない可能性に気づくはずです。それをチャンスととらえて、挑戦するのかどうかを決めるのは、あなた次第です。
成功を阻む最大の壁は、自己規制です。「並外れた業績を達成した人びとの最大の味方は、ほかの人たちの怠慢である」
宝くじは、買わなければ当たらないのです。誰も成功するためのツールを授けてはくれません。
成功者には、指紋のようにひとりひとり違った、個性的な物語がありました。リーダーになろうと思ったら、リーダーとしての役割を引き受けることです。ただ自分に許可を与えればいいのです。チャンスはつねにあり、見つけられるのを待っています。慎重に様子を見るのではなく、チャンスをつかみに行くのです。

5. シリコンバレーの強さの秘密
わたしは学生に「失敗のレジュメ」を書くことを義務づけています。人材の採用にあたっては、成功した経験ばかりでなく、失敗の経験も評価します。失敗というレンズを通して自分の経験を見ることによって、自分が犯してきた過ちを受け入れられるようになるのです。
「失敗こそシリコンバレーの強みの源泉」です。「失敗を財産んだと見られるかどうかが、起業家が生まれる土壌の目安になる」のです。
赤ん坊はどうやって歩き方を覚えるのでしょうか。ハイハイから始めて、つかまり立ちをするようになり、何度も転んで、ようやく歩けるようになります。大人だからといって、最初から正しくできるはずだと期待するのはおかしいのではないでしょうか。
学生たちにリーダーになるチャンスを与えるプログラムがあります。どんなリスクに直面し、どのように対処するか、不十分な情報で意思決定を迫られたときにいかに重圧がかかるのか、めまぐるしく移り変わる環境のなかで事業お引っ張っていくのがいかに難しいかを、学生たちは身を持って体験します。
ベンチャーキャピタル業界は失敗に投資しているようなものです。成功に至る道には、たくさんの屍が横たわっています。
駄目だと思ったら早めに見切りをつけることも重要です。新たな事業を立ち上げる際には、初期段階に厳格な規律を導入し、分析を徹底することで、長期的に成功する確立を引き上げるという方法もあります。レオナルド・ダ・ビンチも、「最初に抵抗するほうが、あとになってから抵抗するよりも楽」だと言っています。
「投資しすぎて、引くに引けない症候群」はかなり強力です。「これにはなにか価値や意味があるはずだ」とか「だからここまで賭けたのだ」と言ってしまうのです。
ですが、何かをやめると、じつは驚くほど元気がでます。やめることの最大の利点は、まっさらな状態からやり直せることです。そして、何が起きたのかを時間をかけて分析するなら、やめたことが貴重な経験になって学ぶことができます。うまくいかないアイデアを考え続けるのをやめ、次に移るべき時期を知らねばなりません。
「丸太に油を注いだら、濡れた丸太にしかならないが、炎に油を注いだら大火事になる」。つまり、自分がエネルギーを注いでいるものが、それに見合った成果が出そうかどうかを見極めることが大事なのです。
わたしがたどり着いた、もっとも科学的な結論はこうです。「心の声に耳を傾け、選択肢を検討しなさい」。まずは、自分自身と正直に話し合わなければなりません。自分に聞いてみるのです。
成功のカギは、すべての弾をかわすことではなく、いかに素早く立ち直るかにあるのです。壁を押し続け、途中の失敗をものともしなければ、成功に突き当たる確立は高まるのです。
キャリアの進歩は、二次元の梯子ではなく、三次元のピラミッドを登るようなものと見るべきです。ピラミッドの端を横に動くことで、経験という土台を作ることができます。
スティーブ・ジョブズスタンフォード大学の卒業式で語っています。「わたしがアップルを追い出されていなければ、これらのことは何ひとつ起こらなかったと断言できます。おそろしく苦い薬でしたが、わたしという患者には必要だったのでしょう。人生には時として、レンガで頭をぶん殴られるような出来事が起こりえるのです。
成功者の大多数にとって、地面はコンクリートではなく、ゴムが敷かれています。地面にぶつかったとき、多少は沈みますが、反動で跳ね上がります。衝撃をエネルギーにして、別のチャンスをつかみに行くのです。
何もしないことは最悪の類の失敗です。想像力は行動から生まれるのです。何もしなければ何も生まれません。
そこそこうまくいくよりも、大やけどする方がずっといい。工学部の学部長を務めるジム・プラマーは、この哲学を信奉しています。3Mのポストイットも、元々は、ただの粘着力の足りない失敗作だったのです。
何らかの価値を引き出す方法はつねにあると、グーグル製品開発を統括するマリッサ・メイヤーは言います。
他人から学ぶことで、失敗の確立を大幅に下げられます。自分ひとりで何もかも見極める必要はありません。データはすべて集め、そして、先人の知恵に学ぶことです。
リスクを取ってうまくいかなかったとしても、あなた自身が失敗者なのではない、ということも覚えておいてください。失敗は外的なものです。
「失敗したからといって自分が失敗したわけではない。あるいは成功したときですら、自分の成功ではない。会社や製品は失敗することがあっても、自分が失敗者なのではない」のです。失敗は学習のプロセスのひとつです。失敗していないとすれば、それは十分なリスクを取っていないからかもしれません。

6. 絶対いやだ!工学なんて女がするもんだ
成功には情熱が必要です。ですが、情熱は出発点に過ぎません。自分の脳力と、それに対する周りの評価を知っておくことも必要です。
情熱とスキルが市場が重なりあうところ。それが、あなたにとってもスウィート・スポットです。
老子はこう言っています。「生きることの達人は、仕事と遊び、労働と余暇、心と体、教育と娯楽、愛と宗教の区別をつけない。何をやるにしろ、その道で卓越していることを目指す。仕事か遊びかは周りが決めてくれる。当人にとっては、つねに仕事であり遊びでもあるのだ」
自分のスキルと興味と市場が重なりあう金鉱を見つけるには、ある程度時間がかかります。
二〇代前半の頃、わたしにも、自分自身に求めることと、他人から求められることを分けて考えるのは、思いの外難しいことでした。身近な人たちは、キャリア・パスを決めたら、そこから外れないように期待するものです。昇順を定めたら、あくまでそれを追い求める「うちっ放し」のミサイルであるよう求めるのです。でも、物事はそんな風にはいきません。
人生には予想外の出来事がいくつも待ち受けています。偶然の出会いは、幸運につながるかもしれません。それを見ないようにするのではなく、目を見開いている方がずっといいのではないでしょうか。キャリア・プランニングは、外国旅行に似ています。どれほど綿密な計画を立てて、日程や泊まる場所を決めても、予定になかったことがいちばん面白いものです。
ある理論が魅力的すぎるために、進歩が妨げられることも、現実にはあるのです。
後からみると、ほとんどの出来事や発見は、焦点が合ったように明確になります。自分のキャリアは、フロントガラスではなくバックミラーで見ると辻褄があっているのです。
働いている場所の生態系によって、どんなタイプの機会が巡ってくるかが大きく左右されます。だから共に働く人の質が最適になるようにキャリアを考えるほうがいいでしょう。
自分の生活やキャリアは頻繁に点検することが大切です。こうした自己評価によって、卓越するには新しい環境に移るべきだという事実を受け入れられるようになります。
いまわれわれの寿命は昔よりさらにのびています。働く期間が長くなり、キャリアをいくつも変えていけるようになっているのです。だから、ニ、三年とられたとしても、すべてがなくなるわけではありません。
ぴたりとはまる役割を見つけるには、実験を繰り返し、多くの選択肢を試し、周りから暗に受け取っているメッセージを検証し、正しくないと思えば突っぱねることが必要です。
行先が見えなくても心配しないでください。目を細めても視界がはっきりするわけではありません。キャリアについてあれこれアドバイスされても、うんざりしないでください。あなたにとって何が正しいかは、あなた自身が見極めるのですから。


7. レモネードがヘリコプターに化ける
「幸運なんてものはないよ。すべては努力次第だ」「努力すればするほど、運はついてくる」。
これは共通したメッセージです。成功する確率がとても低く、競争がどれほど激しくても、体と頭と心を十分に鍛え、準備すれば、可能性を最大化できるのです。
「目標を決め、その目標に向けて懸命に努力すれば、運命は変えられる」
運のいい人たちは、未知のチャンスを歓迎し、経験のないことにも積極的に挑戦します。よく知らないジャンルの本を積極的に読み、あまり知られていない場所を旅し、自分とは違うタイプの人たちとつきあおうとします。運のいい人は楽天的でもあり、自分にはいいことが起きると思っています。これは自己実現の予言になります。よき観察者であり、開かれた心を持ち、人あたりがよく、楽観的な人は、幸運を呼びこむのです。
これまでの章ではレモン(=問題)をレモネード(=チャンス)に変える方法を紹介しました。でも。幸運はそれ以上のことをしてくれます。レモネード(=よいこと)をヘリコプター(=すばらしいこと)に変えてくれるのです。
トム・ケリーは、日々、身の回りの環境を敏感に感じること、外国人旅行者の目になることが必要だ、と言います。外国を旅すれば、見るものすべてが新鮮で、密度の濃い体験ができます。視点を変えることで、毎回面白い発見ができるのです。
経験を積み、知識の幅が広がれば広がるほど、自分の引き出しは増える、スティーブ・ジョブズはそのことをスピーチで教えてくれました。こうした人たちは、点と点を結びつける方法をつねに探していて、アイデアを実現するための努力をしているものです。
自分が得た知識を、目の前のやるべきことに注ぎこみ、経験のないことでも、やらせて欲しいと頼む度胸が必要かもしれません。大きな舞台を夢見ながら、いま居る場所と、目指す場所との距離の遠さに怯んでしまう人もいます。でも、身近なチャンスをひとつひとつモノにすることで、ゆっくりとではあるけれど確実にステージは上がり、そしてその度に最終目標に近づいていきます。訪れた機会を歓迎し、チャンスが舞い込んだら最大限活かし、身の回りの出来事に目を凝らし、できるだけ多くの人たちとつきあい、そして、そのつきあいをできるだけいい方向で活かす。これが、自分で幸運を呼び込み、悪い状況を好転させ、いい状況をさらに良くする方法なのです。

8. 矢の周りに的を描く
一〇歳の誕生日に母からもらった一束のカードが、わたしにとって最高の贈り物になるなんて誰が想像できたでしょう。母は一〇歳のわたしに、お礼状の書き方と、お礼状を書くことがいかに大切かを教えてくれたのです。
あなたのために誰かが時間を割いてくれたのだとすれば、その人自身やほかの誰かのために割く時間を犠牲にしたということなのです。お礼状は書いて当たり前で、書かないのはよほどの例外だと思ってください。
わたしは「ささいなこと」をわかっていなかったばかりに、何度も痛い目にあいました。取り返しのつかない失敗もしました。
そんなわたしが、みなさんに何より覚えておいて欲しいことがあります。世の中にはたった五〇人しかいない、ということです。もちろん、実際にそうなのではありません。ただ、行く先々で知り合いや知り合いの知り合いに出くわして、ほんとうに五〇人しかいないのではないかと思えることが度々あるのです。
人との関わりはすべて、プールに落ちる水滴にたとえられます。関わりが増えれば、水滴はたまり、プールの水深は深くなります。ポジティブな関わりは透明な水滴であり、ネガティブな関わりは赤い水滴です。一滴の赤い水を薄めるには、透明な水滴が何杯も必要です。そして、その数は人によって違います。そして、ほとんどの人にとって、プールの水はゆっくりと排出されていきます。そのため、むかしの出来事よりも、つい最近の出来事が気になります。
わたしは経験のなかで、どうしても水がきれいにならないときがあることを知りました。そんなときは、その人との関わりをやめるべきなのです。
当然ながら、どんなときにも万人を喜ばせることはできません。ときにはあなたの行動で波風が立つ場合もあるでしょう。だれでも間違いは犯します。躓くのも人生の一部です。そうした過ちからどう立ち直るかを知っておくことが重要なのだと今ならわかります。謝り方を身につけるものそのひとつです。「うまくできませんでした。申し訳ございません」と言えばいいのです。
ほかにも、学校では滅多に教えられないけれども大切なスキルに、交渉力があります。
自分の利害ではなく、交渉相手の利害やスタイルに合わせて交渉のやり方を決めるべきです。きっちり作戦を決めて交渉に臨んではいけばません。そうではなく、相手の発言をじっくり聞いて、どんな動機があるのかを見極めるのです。そうすれば、お互いにとって好ましい結果につながります。自分自身の最終目標と同様、交渉相手の目標も理解するように努め、ウィン・ウィンの結果を模索し、いつ交渉の席を立つべきかを知っておくことです。
人助けも大切な習慣です。「つねに高潔であろうとすべきです」。高潔とは、絶対に自分の力になれないとわかっている相手の力になることです。
「大丈夫ですか?何かできることはありますか?」というシンプルな言葉でいいのです。わたしは、それを理解するのに、こんなにも時間がかかりました。
チームで仕事をしているときもこれはあてはまります。優れたチーム・プレイヤー、各メンバーが何でやる気になるかを知っていて、各人が成功する方法を見つけようとします。さらに偉大なリーダーは、各人が長所を活かせる方法を見つけ出しています。まさに、「矢の周りに的を描」くのです。もっとも優秀な人間(=矢)を選んで、その人が得意なことに近い仕事(=的)をつくるのです。
賢明な人たちが陥りがちな大きな落とし穴があります。「正しい行為」ではなく、「賢明な行為」を正当化するのです。優秀な人たちはとかく問題を分析しすぎて、正しいかどうかではなく、自分の利害にもっとも適ったもの(賢明な選択)かどうかで解決策を考えます。これは大きな誤りです。
自分で自分の首を締める場合もあります。最大の要因は、多くの責任を背負いすぎてしまうことです。無理をすると、いずれ収拾がつかなくなります。
「三つのルール」を活用しましょう。三つの優先課題だけに専念すると、欲求不満が溜まるかもしれません。けれども、「ORの抑圧」(あれかこれかの選択を迫られる事態)は避けられます。
ほんのすこしの心がけで、自分でつくりがちな障害や落とし穴を簡単に避けられるようになります。最善の方法のひとつは、自分を助けてくれる人に対して、つねに感謝の気持ちを表すことです。引き出しには買いだめした「サンキュー・カード」を入れておき、こまめにカードをおくりましょう。そして一言「申し訳ございませんでした」と言えるように、謝り方を覚えましょう。あらゆることは交渉可能であり、すべての当事者が活用な方向で交渉することを覚えましょう。他人の強みを活かし、得意なことができるようにしましょう。賢明なことでなく、正しいことをしておけば、後々、胸を張って話せます。最後に、あれもこれもと欲張りすぎないように。

9. これ、試験に出ますか?
「光り輝くチャンスを逃すな」。この言葉が驚くほど学生に心に残ったようです。学生たちは、潜在能力を最大限に発揮し、場外ホームランを打ち、聡明さを輝かせてもいいという許可を渇望しているのです。
見返りに何を得るかが正確にわかっていれば、最低基準を満たすのは簡単です。でも、ソーダの瓶を振ったときのように、限度とされるものを取っ払った時に、めざましい力は発揮されるのです。
人生にリハーサルはありません。最高の仕事をするチャンスは一度きりです。光り輝くとは、いつでも期待以上のことをすると決意することです。
本気で何かをしたいのなら、すべては自分にかかっているという事実を受け入れなければなりません。したいことを、優先順位の上位にもってくるか、さもなければリストから外すべきです。
偉業を成し遂げた人たちは、競争好きだと思われがちです。他人を犠牲にしたからこそ、目標を達成できたと思っている人が多いのです。でも、実際は違います。起業家として成功するには、闘争心を燃やすよりも、やる気に燃えた方がはるかに生産的だからです。資源が限られた環境では、自分だけでなくほかの人たちもうまくいくことを目指したほうが、自分だけが勝つことを目指して争うよりもはるかに生産的なのです。それは「コーペティション(協調と競争)」とよばれます。
光り輝く方法は一様ではありません。ですが、すべては限界を取っ払い、持てる力を遺憾なく発揮しようとするところから始まります。人生にリハーサルはありません。ベストを尽くすチャンスは一度しかないのです。

10. 実験的な作品
種明かしをすると、これまでの章のタイトルはすべて、「あなた自身に許可を与える」としてもよかったのです。わたしが伝えたかったのは、常識を疑う許可、世の中を新鮮な目で見る許可、実験する許可、失敗する許可、自分自身で進路を描く許可、そして自分自身の限界を試す許可を、あなた自身に与えてください、ということなのですから。じつはこれこそ、わたしが二〇歳のとき、あるいは三〇、四〇のときに知っていたかったことであり、五〇歳のいまも、たえず思い出さなくてはいけないことなのです。
周りには、踏みならされた道にとどまり、塗り絵の線の内側にだけ色をつけ、自分と同じ方向に歩くよう促す人たちが大勢います。
「クリエイティブな自信をもって旅立つ」。そうしてください。実験し、失敗し、もう一度トライしてもいいのです。わたしたちの誰もが認識すべきなのは、ひとりひとりがおなじように許可されているということです。許可をするのは自分であって、外から与えられるものではありません。わたしたちはこの点を知りさえすればいいのです。
人はそれぞれ、世の中をどう見るかを自分で決めています。どういう精神状態にあるかで世の中はまったく違って見えるのです。身の回りには、割れ目も花もあふれています。どちらを見るかは、わたしたちひとりひとりが決めているのです。
「自分に対しては真面目すぎず、他人に対しては厳しすぎないこと」。過ちを犯しても、大地が揺らぐことなど滅多にないのです。人生に起きることのほとんど、とくに失敗は、そのときの自分が思っているほど大したことではないのです。
成功は甘美だけれど、移ろいやすいものです。脚光を浴びたときは大いに楽しめばいいけれど、時機が来たら、主役を譲る覚悟がなければいけません。自分は取り替えがきかない存在ではないのです。
命あることの喜びを噛みしめることです。人は、毎日がかけがえないと頭ではわかっていますが、歳をとったり、生死にかかわる病気をしたりすると、それが実感としてかんじられるのです。
不確実性こそ人生の本質であり、チャンスの源泉です。不確実性こそが、イノベーションを爆発させる火花であり、わたしたちを引っ張ってくれるエンジンなのです。
この本の物語で伝えたかったのは、快適な場所から離れ、失敗することをいとわず、不可能なことなどないと呑んでかかり、輝くためにあらゆるチャンスを活かすようにすれば、限りない可能性が広がる、ということでした。もちろん、こうした行動は、人生に混乱をもたらし、不安定にするものです。でも、それと同時に、自分では想像もできなかった場所へ連れて行ってくれ、問題がじつはチャンスなのだと気づけるレンズを与えてくれます。何よりも、問題は解決できるのだという自信を与えてくれます。
二五年前にわたし自信が書いた詩を読んで思い出すのは、二〇代の頃、次のカーブに何が待ち受けているのかわからなかったが故に抱いた不安です。将来が不確実なのは歓迎すべきことなのだと、誰かが教えてくれればどんなにかよかったのに、と思います。予想できる道を外れたとき、常識を疑ったとき、そしてチャンスはいくらでもあり、世界は可能性に満ちていると考えることを自分に許可したときに、とびきり面白いことが起きるのですから。


【書評】
大人の階段をのぼっていく自分の子供に、母は何を伝えたかったのか。ふかいふかい愛情が、この本の底に流れている。
人生をふりかえってみて、今目の前に20歳の自分がいたら、なんと声をかけてほしいだろうか。深淵をのぞきこんで、空恐ろしくなり、ぶるぶるとふるえている若者に、私は何を伝えるだろうか。
彼女自身が教えて欲しかったこと。それがここに書き連ねてある。メッセージ。それは、「あなたはここにいてもいいのだよ」、という果てしない許しなのかもしれない。
読み終えて目頭が熱くなった。
彼女の、母の、ふかい愛情にうたれたからだ。